卒業式だった日は
夕飯は母さん達と食べた。

あれから半年。

僕はマンションに引っ越して来た。

一葉ちゃんは四月から
高校生になり、宮戸さんとも
上手くいってよかった。

そう言えば、一葉ちゃんが
宮戸さんを連れて来た時の
桂二さんは可笑しかったなぁ(笑)

僕は知ってたから笑って
〈おめでとう〉
って言ってたけどね。

同じ教師同士だから
時間をかければ二人は
打ち解けると思うんだよね。

今度、此所で食事会をしよう‼

『一葉ちゃん』

リビングで洗濯物を畳んでいた
一葉ちゃんをキッチンに呼んだ。

「何ですか?」

手に持っていたタオルを
畳んでからこっちに来た。

『今度の休みに宮戸さんを
呼んで此所で食事会しよう。
宮戸さん、お酒飲める?』

大人なんだから、きっと
お酒を飲みながら話せば
きっと打ち解けられる気がする。

「飲めますよ。
そうですね、
夢仁さんに予定訊いときます」

春休みの僕達未成年者組は
マンションでのんびりと過ごしていた。

教師組の二人は春休みでも
何かと忙しそうだ。

*゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜*゜ *゜*゜*゜

**食事会当日**

教師組の都合がなんとかつき、
食事会の日がやってきた。

「お招きありがとうございます」

彼はご丁寧に土産を持って来た。

「夢仁さん、いらっしゃい。
それからありがとう」

一葉ちゃんが宮戸さんから
土産を受け取り、
中に入るよう促した。

「お邪魔します」

脱いだ靴を綺麗に整えた。

几帳面なのかも知れない。

「ええと、彼は?」

そういえば、
自己紹介してなかったっけ(苦笑)

『お会いするのは二度目ですが
きちんとご挨拶するのは
初めてですね。
一葉ちゃんの父親の“恋人”で
葛原未央と申します』

「恋人……!?」

予想通りの反応で
ちょっと可笑しかった。

『はい。“恋人”です』

二人は親子揃って
笑うのを堪えている。

隠しきれていないけどね。

『桂二さん、一葉ちゃん
こういう時は笑っていいんだよ』

僕の言葉で
宮戸さんも二人の方を見た。

『悪い未央』

別に怒っちゃいない。

というか、
貴方も当事者ですよ?(苦笑)

『改めて、一葉の父親で
彼の“恋人”の篠原桂二です』

宮戸さんはまだ少し
混乱気味みたいだ。

*゜*゜*゜*゜*゜*゜*゜*゜*゜*゜*゜

どうにか落ち着いた
宮戸さんにお茶を出した。

「なんか、すみません」

謝られてしまった。

『いえ、こちらこそ
驚かしてしまって申し訳ない』

教師組が謝りあっている。

ちょっと可笑しな光景だ。

僕の隣にいる一葉ちゃんは
一度落ち着いたのに
また笑い始めた。

『そろそろ、
夕飯の用意するけど
何かリクエストはある?』

食事会といっても
気楽に飲んだり食べたり
ようは話す機会が欲しかっただけだ。

『俺は何でもいい』

桂二さんならそう言うと思った。

「夢仁さんは?」

一葉ちゃんが恋人に訊ねた。

「人様の家でリクエストなんてできないよ」

「遠慮しなくていいのに……
未央さん、何作りますか?」

二人でキッチンに戻り、
冷蔵庫や野菜室を開けた。

『野菜炒めと冷奴と……
後、何作ろっか?』

とりあえず、野菜炒めの
材料を出しながら考える。

一葉ちゃんと相談しながら
作った夕飯は[野菜炒め]
[冷奴]、[ほうれん草の卵とじ]
[わかめと玉ねぎのお味噌汁]になった。

『お待たせ』

おかずを運び、四人分の
ご飯とお味噌汁をよそって
持って行き席に着いた。

教師組にはビールとグラスも。

僕達は炭酸飲料を。

飲み物も揃ったところで
四人で手を合わせ、食べ始めた。

夕飯が終わる頃には
宮戸さんも落ち着いたようで
僕とも普通に話してくれた。

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「未央君は篠原さんの
何処に惹かれたの?」

食休み中、そんな質問をされた。

〔何処に〕
と訊かれると難しい……

一目惚れだったしね。

『そうですね……
一目惚れだったので
何処と決めるのは難しいですが
優しくて聞き上手なところですね』

桂二さんは本当に
聞き上手で、男子の喧嘩を
すぐに解決してしまう。

他の教師はガミガミと
叱り飛ばすだけで
話を聞こうともしないのだ。

『宮戸さんは一葉ちゃんの何処を?』

聞き返してみた。

「正直で真っ直ぐで……って
言い表せないかなぁ(苦笑)」

成る程、確かに一葉ちゃんは
いいところを沢山持っている。