帰りの新幹線の中、裕貴君が牛タン弁当を買ってくれたので三人で食べている。

「やっぱり、牛タンと言えば仙台だよなー」

裕貴君が美味しそうに頬張ると、ヒロ君も同じ様に美味しそうに頬張る。その二人の姿に癒される。

「カナミちゃん、いや、ミヒロちゃんのが良い?でも、自分の名前を呼んでるみたいだから、やっぱりカナミちゃんかな?」

「どっちも本人なんだから、どっちでも良いだろ!……けど、真実を知らない人の前では使い分けに気をつけなきゃな」

「裕貴、お前もな」

モグモグしながら話をする裕貴君。

「……そう言えば、海大の会いたかった人って、茜ちゃん?お兄ちゃんの彼女なの?」

「そうだよ。病気持ちで茜ちゃんは高校を辞めてるんだ。潤兄も辞めてからは一切会えてなかったらしいけど、最近になって御両親からスマホに電話があったらしいんだ……」

私も気になっていた事を裕貴君が自ら、どんどん聞いている。

ヒロ君が話してくれた事は、茜ちゃんは学校を辞めた後に治療に専念したが、様々なストレスから鬱状態になってしまったらしい。

その原因が学校を辞めた嫌な思い出のある東京に住んでいるからだ、と勝手に決めつけた御両親は仙台の母方の実家に引っ越しをした。

それからと言うもの、親友の私や彼氏の潤君にも会えないストレスも加算され、少しずつ鬱になってしまった。必死に勉強して入った学校を辞めさせられた事から始まり、私達に会えない寂しさが引き金となってしまった。

御両親は日に日に茜ちゃんが引きこもってしまうのを恐れて、潤君に助けを求めたのだ。

茜ちゃんのスマホは解約されて番号もスマホ自体も変わったが、御両親が保存しておいた以前のスマホのデータから潤君の電話番号を探し出して連絡したらしい。

潤君も必死で茜ちゃんを探していたが、見つからずに挫けそうになっていた時の連絡だったので泣いて喜んでいたそうだ。