楓に連れて来られたのは同じ階にある空き教室だった。


中は埃っぽくてせき込んでしまいそうになる。


それでも、今の教室よりは随分と居心地がよかった。


「今朝からみんなの様子がおかしいと思ってたの。なにかあった?」


楓があたしにそう聞いてくる。


どうやら、椅子の上に置かれていた画鋲には気が付いていないみたいだ。


あたしはいつものように笑顔を見せようとしたが、どうし手もうまくできなかった。


ひきつった口角が、徐々に歪んでいくのを感じる。


ダメだ、泣いてしまいそうだ。


そのまま下唇を噛みしめた。


こんなところで泣くなんて絶対に嫌だった。


楓は心配するだろうし、負けた気分になってしまう。


だから必死で涙をひっこめた。