トイレにでも行って来たのか、その手にはピンク色のハンカチが握られていた。


いつもと変わらない笑顔の久美に安堵して「おはよう」と、返事をする。


そして自分の席に座ったその瞬間、痛みが走って「痛っ!」と声を上げていた。


すぐに席を立って椅子の上を確認してみると、そこに針が上を向いた状態で画鋲が置かれていたのだ。


ギョッとして目を見開く。


そしてまた感じるクラスメートからの視線……。


あたしは椅子から顔を上げることができなかった。


合成写真よりももっと攻撃的なものへと変化している。


相手はもうクラス中の生徒を巻き込んでいるのかもしれない。


そう思うと、顔を上げて誰かと視線をあわせることが怖かった。


「美紗」


あたしの名前を呼ぶ声がして、あたしの手が握られていた。


返事をする暇もなく、あたしは楓に連れられて教室を出たのだった。