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土曜日のショッピングモールはたくさんの人たちで賑わっていた。


今朝のチラシを見てか、いつもの休日の倍くらいの人がいる。


「さすがに多いな」


人の多さにお父さんはすでに疲れているようだ。


それでも、新しいお店を見てからじゃないと帰れない。


人の合間を縫うように進んでいくと、そのお店が現れた。


「あ……」


お店を見た瞬間、そう呟いた。


そこは久美が好きな化粧品のお店だったのだ。


久美が持っていたファンデーションも店頭に飾られている。


「あら、ここの化粧品素敵ね」


お母さんがそう言って立ち止まる。


店内を見ると、年配の女性も沢山買い物をしているようだった。


「あれ、美紗?」


その中の1人と視線がぶつかり、名前を呼ばれてあたしは一瞬言葉に詰まった。


久美だ。


サッと血の気が引いていくのを感じる。