クラスではイジメられていたから、明人君のお調子者の姿を見るのは初めてだ。


明人君はゴミ箱を逆さまにしてゴミを焼却炉の中へ入れて行く。


自分のズボンのポケットに手を突っ込み「しまった」と、小さく呟いた。


「どうしたの?」


「マッチを忘れてきちゃった。一旦保健室に戻らないと」


ため息を吐き出す明人君に、あたしはとっさにライターを差し出していた。


あたしの手の上に乗ったライターに明人君が目を丸くする。


「あ、このライター、焼却炉に裏にいつも隠されてるの」


慌ててそう説明すると、明人君は「うん、知ってる」と、頷いた。


「え?」


「俺、何度もここでいらない物を燃やしてたから、ここが隠れた喫煙所になってることも知ってる」


「あ、そうなんだ……」


あたしは明人君から視線を逸らせた。


なんだか、胸がざわつく。


嫌な予感がする。


「富田さんは、なんでそのこと知ってるの?」


明人君に聞かれて、あたしは偶然喫煙している生徒を見かけたのだと伝えた。


嘘じゃない。


本当のことだ。