☆☆☆

昼休みになっても額の熱は治まらなかった。


あんなイケメンに至近距離で熱をはかられたことなんて、生まれて初めての経験だ。


なに、この少女漫画的な展開は……。


あたしはミッキーとの出会いを思い出してそう思った。


突然出合ったイケメンは妙に馴れ馴れしくて、だけど突き放す事ができなくて、次第にひかれて行く。


こんなベタな展開が自分に待ち受けているなんて思っていなかった。


思い出すだけでも恥ずかしくて両手で顔を覆った。


「どうしたの美紗」


その声に顔を上げると、机の前に楓が立っていた。


「……なんでもない」


小さな声でそう返事をする。


その様子はきっと『なんでもない』ことはないと言っているようなものだと思う。


「顔、真っ赤だよ? 熱でもある?」


そう言い、楓はミッキーと同じようにあたしの額に手を当ててきた。


ヒヤリと冷たい楓の手が、今は心地いい。