久美は早速自分の興味のあるメイク道具についての話を始めた。


「そ、そうなんだ」


あたしも久美におすすめされてリップくらいなら買った事があるけれど、それ以外の化粧品はよくわからなかった。


「ほら見て、可愛くない?」


久美は鞄の中から真新しいファンデーションを取り出して自慢して来る。


確かに、可愛らしいケースだ。


久美の鞄の中には沢山の化粧品と、オヤツと、ファッション誌が入っている。


勉強道具は全部学校に置いて帰っているのだ。


あたしとは正反対な久美にあたしは愛想笑いを繰り返す。


できれば久美の機嫌を損ねたくはない。


クラスの中心人物である久美を敵に回せば、あたしの学校生活は更に逼迫した物になることは確実だった。


あるいは、もうすでに久美の機嫌を損ねてしまっていて、犯人は久美なのかもしれない。


あたしは久美の話に相槌をうちながらグルグルと思考回路を迷わせた。