「今日はいい天気だねぇ。ここ、気持ちがいいね」
青年はニコニコと上機嫌でどうでもいい話を始める。
「あの、さぁ……」
とにかく捕まえられている手を振りほどこうとしてみるが、青年の力は思ったよりも強くで振りほどく事ができない。
ブンブンと強く振ってみても、青年はニコニコとほほ笑むばかりだ。
鈍感なのか天然なのか知らないけれど、その笑顔に胸の奥がむかついた。
「離してほしいんだけど!」
声を荒げてそう言うと、青年はハッとした表情になりあたしの手を離した。
温もりが離れて行き、ホッとため息を吐き出す。
「ごめんね、痛かった?」
青年はオロオロとした表情でそう聞いてくる。
あたしは青年を睨み付けた。
「見知らぬ相手に手を掴まれたら誰だって嫌でしょ」
痛いとか、痛くないは次の段階の問題だ。
オロオロしていた青年は急に落ち込み、肩を落として俯いてしまった。
「そうだよね、ごめん、俺、気が付かなくて……」