透が久美のことを好きだったなんて信じられない。


放課後になった今もあたしは驚きを隠せないままだった。


「美紗、帰ろう」


ノックもせずに保健室のドアが開かれ、楓が入って来た。


楓は時々保健室へ来てはあたしの様子を気にかけてくれていた。


「あ、うん」


あたしは鞄を持ち、そそくさと立ち上がる。


その時、明人君と視線がぶつかった。


明人君は今日も透と一緒に帰るんだろうか?


そう思ったけれど、開け放たれたドアの向こうに透の姿はない。


「明人君、よかったら一緒に帰らない?」


女2人の中に明人君が入るなんて嫌かもしれないと思ったけれど、そう声をかけた。


保健室で授業を受けているたった1人の同級生だ。


「え、俺は……」


やっぱり居心地の悪さを感じるからか、明人君はあたしと楓を交互に見つめた。