「美紗?」


「なんでもない。大丈夫だから」


そう言う声は震えていた。


どう見ても大丈夫ではない状況だろう。


だけど楓はなにも言わなかった。


ただ、真剣な表情であたしを見つめている。


もしかしたら、あたしが話をするのを待ってくれているのかもしれない。


けれど、今何かを言うつもりはなかった。


万が一楓も犯人の味方だったら?


そんな不安がぬぐいきれない。


楓には申し訳ないことだと思うけれど、犯人が見つかるまでは心を開く事ができなかった。


代わりに、あたしは気になっていたことを訊ねることにした。


「楓、1年生の頃同じクラスだった明人君を覚えてる?」


あたしの言葉に楓は一瞬目を見開いた。


突然出て来た明人君の名前に戸惑っている様子だ。


「……うん」


楓は小さく頷いた。


「明人君がどうして学校に来なくなったか、理由も知ってる?」