「ふっ、ふっ、ふ~」
「何だよ、樹」
「来栖さんと付き合えて羨ましい?」
「…」
うぜえ、と河野は思った。
友達の樹は、一目惚れした来栖さんと付き合えて嬉しいらしく、やたら自慢してくる。
ただ、頬が緩みまくり、女みたいな声を出しているので気持ち悪い。
今は、校舎の屋上で、昼食を二人で食べているから、いいものの、食堂だと、周りの人から、変な目で見られる。
運が良かったな、と友人の言葉なんか無視して、河野はそう考えていた。
「なあ、聞いてるか?」
「まあ、テキトーに」
「はぁ?ふざけんな!」
気の抜けた返事をすると、樹はすぐに飛びかかってきた。
「だってさあ、メールで、樹が送っても、返事無いじゃん。あ、化けの皮剥がれかけて…」
胸ぐらを掴まられ、言い終わらない内に、河野は2、3発殴られた。
そのうちの一発が見事、鳩尾に当たり、痛みでその場に蹲った。
「うぐっ…」
「今度、無駄口叩いたら、只じゃ済まさないからな」
樹は笑顔の仮面を被り直して、屋上から出ていった。
「やっぱ、怖ぇ」
そう呟いたら、河野の携帯から着信音が鳴り響いた。
「あ、来栖さんか…。そういえば、メールで電話番号教えてもらったっけ。優斗も知ってるけれど、あの怪獣知らないみたいだな」
と、樹の顔を思い出しながら、通話ボタンを押した。
『あ、もしもし、』
澪南の声が聞こえた。
「来栖さん、どうかしたんすか?」
『…高月から、童顔君のことは大分聞いたんだけど本当?』
「ああ…、あいつが猫被ってることですね。本当ですよ。さっきなんか、来栖さんのことで、一言ちょっと言ったら、鳩尾に一発くらいましたよ」
『ふふっ、』
落胆した声を出せば、通話口から、笑い声が、聞こえてきた。
笑い声を必死に抑えているのが伝わる。
『はあ、やっと治まった。それにしても童顔君、かなり面白いね』
「いや、笑い話のレベルじゃないすよ。でもまあ、樹は来栖さんのこと好きだから、狂暴なのは、心配無用っすけどね」
『どうだかなー。あ、でも、一回怖い童顔君を見てみたいかも。見せてくれない?』
「え…」
『このこと、黙ってあげるから。じゃあさ、高月か、河野の家に遊びに行くとき、ついでに私に教えて。そしたら、部屋のクローゼットにでも隠れられるし』
「…しょうがないですね。じゃあ、今週の日曜、優斗の家で勉強会やるんで、来てください。優斗には話しておくので。あと、ついでに勉強道具も良かったら持ってきてください」
『わかった。ありがとね。ていうか、何でわざわざ勉強会?河野も童顔君も頭悪いの?』
「この間の中間で、俺は、大体70点だけど、樹が40で、危ないって話になったんです」
『うわ、童顔君結構低いね。でも、河野、チャラい見た目の割に、勉強は悪くないんだ』
「はは…。親父がうるさいですから…」
『あー、まあじゃあね。日曜日はよろしく』
そうして、電話を切った。
「ああ…。面倒なことになったな…。優斗にも連絡しないと。樹には、最悪バレても、来栖さんに会いたそうだから、サプライズ、って言えば誤魔化せるよな」
青く、澄んだ6月の空を見た。
「それにしても、来栖さん。意外と話しやすくて良い人だな」
雲ひとつない、晴れ渡った空は、河野の心とは真反対だった。
「何だよ、樹」
「来栖さんと付き合えて羨ましい?」
「…」
うぜえ、と河野は思った。
友達の樹は、一目惚れした来栖さんと付き合えて嬉しいらしく、やたら自慢してくる。
ただ、頬が緩みまくり、女みたいな声を出しているので気持ち悪い。
今は、校舎の屋上で、昼食を二人で食べているから、いいものの、食堂だと、周りの人から、変な目で見られる。
運が良かったな、と友人の言葉なんか無視して、河野はそう考えていた。
「なあ、聞いてるか?」
「まあ、テキトーに」
「はぁ?ふざけんな!」
気の抜けた返事をすると、樹はすぐに飛びかかってきた。
「だってさあ、メールで、樹が送っても、返事無いじゃん。あ、化けの皮剥がれかけて…」
胸ぐらを掴まられ、言い終わらない内に、河野は2、3発殴られた。
そのうちの一発が見事、鳩尾に当たり、痛みでその場に蹲った。
「うぐっ…」
「今度、無駄口叩いたら、只じゃ済まさないからな」
樹は笑顔の仮面を被り直して、屋上から出ていった。
「やっぱ、怖ぇ」
そう呟いたら、河野の携帯から着信音が鳴り響いた。
「あ、来栖さんか…。そういえば、メールで電話番号教えてもらったっけ。優斗も知ってるけれど、あの怪獣知らないみたいだな」
と、樹の顔を思い出しながら、通話ボタンを押した。
『あ、もしもし、』
澪南の声が聞こえた。
「来栖さん、どうかしたんすか?」
『…高月から、童顔君のことは大分聞いたんだけど本当?』
「ああ…、あいつが猫被ってることですね。本当ですよ。さっきなんか、来栖さんのことで、一言ちょっと言ったら、鳩尾に一発くらいましたよ」
『ふふっ、』
落胆した声を出せば、通話口から、笑い声が、聞こえてきた。
笑い声を必死に抑えているのが伝わる。
『はあ、やっと治まった。それにしても童顔君、かなり面白いね』
「いや、笑い話のレベルじゃないすよ。でもまあ、樹は来栖さんのこと好きだから、狂暴なのは、心配無用っすけどね」
『どうだかなー。あ、でも、一回怖い童顔君を見てみたいかも。見せてくれない?』
「え…」
『このこと、黙ってあげるから。じゃあさ、高月か、河野の家に遊びに行くとき、ついでに私に教えて。そしたら、部屋のクローゼットにでも隠れられるし』
「…しょうがないですね。じゃあ、今週の日曜、優斗の家で勉強会やるんで、来てください。優斗には話しておくので。あと、ついでに勉強道具も良かったら持ってきてください」
『わかった。ありがとね。ていうか、何でわざわざ勉強会?河野も童顔君も頭悪いの?』
「この間の中間で、俺は、大体70点だけど、樹が40で、危ないって話になったんです」
『うわ、童顔君結構低いね。でも、河野、チャラい見た目の割に、勉強は悪くないんだ』
「はは…。親父がうるさいですから…」
『あー、まあじゃあね。日曜日はよろしく』
そうして、電話を切った。
「ああ…。面倒なことになったな…。優斗にも連絡しないと。樹には、最悪バレても、来栖さんに会いたそうだから、サプライズ、って言えば誤魔化せるよな」
青く、澄んだ6月の空を見た。
「それにしても、来栖さん。意外と話しやすくて良い人だな」
雲ひとつない、晴れ渡った空は、河野の心とは真反対だった。