救助現場の中州から上昇し、取材ヘリの追跡を回避するため、帰る方向と逆方向に
飛ぶ。途中からステルスモードで身を隠し、帰投するコースに乗る。
「上手くいったね」
「初回にしては上出来だ」
 陸くんと、そんな会話をしながら飛行を続ける。
 正直、最初からこんなに上手く行くとは思っていなかった。
 失敗もなく、全員救助することが出来た。私達が邪魔者扱いされたら、どうしよう
と心配たけれど、大丈夫だった。きっと、先着のレスキュー隊が岸側に居たことで、
私達と干渉することが無かったのが、幸したのだろう。

 ああ、良かった。
 人助けが出来たことも嬉しいが、自分の力が役にたった事が嬉しい。
 心がウキウキする。
 嗚呼、鳥のように飛びたい気分。
「ねえ、宙返りしてみない」
「宙返り? やったことないでしょ。そんなの」
「やりたい気分なの。いくよ」
「わわ、待って」
 陸くんの返事を待たずに、背中方向に意識を集中。
 グングンと体が上昇。地平線が眼下に飛び去る。
 視界の全部が青空になる。そのまま飛びつづける。
 視界の上部に上下反転の地平線が現れる。今度は、視界の全部が地面になる。
 再び、正面に地平線が現れる。
「凄い! 出来た! 気持ちいい!!」
「急にやるなよ」と陸くんが呆れる。
 それに応える前に、笑いが飛び出した。
 アハハ。アハハハハ。
 生きてて良かった。超能力が使えるようになって良かったと。心の底から思う。