景色の様子が変わって来た。建物が減り、水田や緑が増えてきた。
「もうすぐだよ」と教えられ、速度を落とし、高度を下げる。
 川に沿って飛ぶ。水嵩が多いのが、上空からでも見て取れる。
「あれだ」と陸くんが指さす。
 川幅が広くなっているところがある。
 川に平行に並ぶ道路に救急車両が沢山集まり、人だかりが出来ている。
 上空をマスコミのヘリが旋回している。そのヘリを避けながら降下を続ける。

 激しい流れの中、八畳ほどの中州に10人の大人子供が身を寄せ合っている。
 両岸で20人程のオレンジ服のレスキュー隊員が作業をしている。
 川の流れに斜めにワイヤーを張り、中州に渡ろうとしているが、流れが急なため、
動きが取れずにいるようだ。

「中州に降りよう」陸くんの言に従い、中州に着陸する。
 取り残された人たちが、驚きの顔で私達を見つめる。
 突然、空から人が現れたのだから、驚くのも無理はない。
 三人の大人に、子供たちが纏わりつく様にしがみ付く。
「き、君たちは。……何なんだ」年かさに男性が尋ねてきた。
 私は、相手を怖がらせぬよう、静かに落ち着いた声で話かける。
「私たちはソラシドレスキューです。皆さんを助けに来ました」
「助ける?」
「そうです。今から一人ずつ人を運びます。お子さんから先に運びますので、順番を
決めて下さい」