お父さん。何故か、人類の将来に関する壮大な話を始めた。
 そうか、さっき私が「もし、人が」と尋ねたのを、人類全体の事と考えたのね。
 でも、私が求めているヒントが貰える。そんな気がする。
「もしも、人類がその繁殖力だけで繁栄を極めたのならば、その運命は自然の摂理に
従うほかない。でも、人類には知恵がある。叡智がある。人類は、その叡智で地球を
より良い姿に変える事ができる」
「……」
「力を持つ者は、周囲に良い影響を与えるように振舞わなくてはならない。それが、
力を持つ者の義務だと思う」

 力を持つ者は、周囲に良い影響を与えるように振舞わねばならない。
 noblesse oblige《ノブレス・オブリージュ》。
 高貴なる者の責務。正にその通りだ。
 ……だけど。陸くんが懸念しているような事も……。
「 でも、力を悪用しようとする人もいる。そんな時、どうすればいい」

 お父さんは、再び目を閉じて考える。
 そのまま、時が流れる。
 簡単な問題ではない。お父さんは、どんな答えをだすのだろうか?