遠回りしたので、通常なら10分程で帰れるのに1時間以上飛び続けている。

 偽の救助要請に騙され、映画ばりの空中戦も経験した。
 精神的にも肉体的にもクタクタだ。
 ようやっと、見慣れた景色が見えて来た。
「もう直ぐだよ。陸くん」と声をかける。
「……」
 反応が無い。陸くんも疲れてるのかな?
「陸くん。大丈夫?」
「……」
「陸くん。もうひと踏ん張りだよ。あと少し……」
 その言葉が終わらぬうち、私達の体は急降下を始めた。
 急降下というより落下だ。
 バリアも消え、強烈な風圧に晒される。

 上方に意識を集中しても、落下が止まらない。
 超能力が効かない。ど、どうしたんだ?
 陸くんにしがみ付き、体を揺する。
 ううっ。
 陸くんが呻く。
 と、同時に落下が減速し、バリアが復活する。
「陸くん。しっかりして!」
 呼びかけには応じず、陸くんが再び首を項垂れる。
 落下のスピードが増し、バリアが陽炎のように弱々しくなる。