次の日、私はもう一度、陸くんの家を尋ねる事にした。
 陸くんの家の住所は、昨日のうちにシーちゃん達にも知らせてある。
 だけど、陸くんと話をするのは私一人と決めている。
 陸くんをソラシドレスキューに引き込んだのは、私だ。
 だから、陸くんをソラシドレスキューに呼び戻すのも私の役目。

 強い決心を胸に家を出る。
 でも、陸くんを説得出来る当てはない。
 陸くんは、ソラシドレスキューに対する嘘の救助要請を問題視している。それが、
解決しない限り、私達の元に帰ることは無いだろう。
 でも、残念ながら私には妙案はない。シーちゃんやアッキーだって同じだ。
 でも、何とか説得するしかない。こうしている間にも、助けを求めている人達が、
居るのだから。

 固い決意と、重い無力感を背負い、陸くんの家のインタホンを鳴らす。
「はーい」と言う声と共に、陸くんのお母さんが玄関に現れた。
「あら。天野さん」予想していた通り、お母さんは驚きの顔で私を出迎える。
「こんにちは。申し訳ありません。迷惑も顧みず、また御伺いしました。陸くんは、
ご在宅でしょうか」と頭を下げる。
「良いのよ、天野さん。そんなに恐縮しなくて、普通にして頂戴。でも、生憎、陸は
外出中なの」

 ああ、そうか。きっと、陸くんは私を避けるために外出したのに違いない。
 徒労感が、私を押しつぶしにかかる。