その次の日も、陸くんは来なかった。
 このままじゃ駄目だ。なんとかしないと。
 とにかく、陸くんと直接話して、仲間に戻って貰おう。そういう結論になった。
 だけど、私達三人が三人とも陸くんの家を知らない。
 個人情報の保護とやらで、学校に聞いても住所は教えて貰えそうもない。
 仕方がないので「手分けして捜そう」という事になった。
 さて、陸くんの家の場所なのだが、多少なりともヒントがある。私が、初めて力を
発動させた日、私達は途中まで陸くんと同じコースを歩いていた。だから、陸くんの
家は、私の家と同じで菅谷用水の西側の可能性が高い。徒歩での登校だから、距離の
見当もつく。
 そんな訳で、菅谷用水の西側地区を、三人で手分けして捜すことになった。

 さて、実際に捜索を始めてみると、言うほど簡単でないことが分かってきた。
 佐藤という苗字を頼りに捜すのだが、標札を掲げている家は多くない。例え掲げて
いても、家族の名前まで公開している家は更に少ない。
 その数少ない『佐藤家』を見つける度に
「佐藤陸さんのお宅でしょうか」「ご親戚に佐藤陸さんという方は居ませんか」
と尋ねて回る。
 十軒、二十軒と空振りを繰り返すうち、徒労感で歩みが遅くなる。
 汗で重くなった制服のブラウスが、体に絡み付く。
 夏の暑さのせいもあって、頭がボーっとしてきた。
「あー、疲れた」思わず独り言ちる。
 疲労のために、頭も体もチーズフォンデュのようだ。今にもとろけだしそう。
 少し休もう。そう思って、小さな公園のベンチに腰を落とした。