「サオ」


バイトが休みの日、お姉ちゃんがリビングでそう声をかけて来た。


テレビを見ていたあたしはチラリと視線だけ向けて、返事はしなかった。


これはいつものことだった。


お姉ちゃんはコーヒーの入っているカップを手に、あたしの隣に座った。


いつもより近い距離に体をずらして距離を開けた。


「ごめんね」


突然のその言葉にあたしはお姉ちゃんの横顔を見つめた。


視線はカップの中へと降り注いでいる。


「なにが?」


あたしは声を絞り出すようにしてそう聞いた。