華恋の事件が起きて、1週間が過ぎた。
「ねえ、もう華恋のことは、忘れた?」と美咲が尋ねた。
「なんか、夢だったんじゃないか、と思える。」と健太郎。

単刀直入に美咲は、健太郎に言った。
「もう、おじさんの研究に協力しないで?」
美咲は、すがるような思いで、言った。

「美咲を、そんなに困らせてたなんて、知らなかったよ。ごめん。」健太郎は、誠実に謝った。
「本当?うれしい。ありがとう、健太郎。」

そこへ、スマホのベルが鳴った。
「わしじゃ、藤澤だ。ようやく調整が終わった。これから、迎えに来てくれないか?」
「おじさん、もう協力は、しません。だれか他を当たってください。」
「華恋が、お前に逢いたがっている!」
その言葉に、健太郎は揺れた。まだ、記憶が、あるのか?それじゃ、夢じゃなかった。
「ねえ、健太郎、なんの電話」美咲が、じれったく、洋服の裾を、掴んでいる。
「美咲、華恋は、嫌いか?」
「だって、健太郎が、フラフラするから。」
「美咲、今までと同じように、これからも、お前が好きだ。決して、お前を裏切らない。」
それは、健太郎の今の本心だった。アンドロイドは、愛せないと思っているうちに

「それじゃ、一緒に華恋を迎えに行こう。いいな。」と健太郎。
「まさか、アンドロイドと恋に落ちないよね?」と美咲が目を正面から覗き込む。
「俺は、ボブヘアーが、好みなんだ。ロングヘアーには、惹かれない。
とは、言ったものの、内心美咲以外の女性とは、親しくなったことが、なかったため、本当は、好みだった。

「健太郎さん、会いたかった。」と華恋。
「よかった。記憶が消えなくて、よろしく、華恋。」
「私のこと、覚えてる?」と美咲。
「はい、嫉妬深い美咲さんですよね。」
「その嫉妬深いは、余計よ!」美咲が、かーと熱くなる。

「実はな、健太郎、AIを求めて、各国から産業スパイが、入りこんでる。いざとなったら、華恋が、お前たちを守る。」
「華恋には、いったいどれだけの能力が、あるんですか?」
「それは、いずれわかる。」そして「こっちへ来い」と言った。
「華恋には、スーパーモードがある。ただし、そのままでは、暴走する。危険だ」
「その時は、どうしたら、良いんです?」
「お前が、華恋にキスすれば、ノーマルモードに戻る。」
健太郎の頭の中が、混乱した。美咲が悲しむ。しかし、そのままでは、正体が他人にばれる。

「美咲、今から、お前と別れたい?」
美咲の右平手チョップが、健太郎の左ほほに
炸裂した。
「私、別れないから!」と言って、きびすを返して、出て行った。