「ああ、健太郎か、わしじゃ。福澤だ。実は、華恋が脱走した。」
「おじさん、華恋は、人間には、逆らわないように、できてるんじゃ、なかったんですか？」
「その通りじゃが、交通事故でバグが出てきたようだ。すまんが、華恋が来たら、研究室まで、連れてきてくれ。お前のいうことなら、従うだろう。」
「おじさん‥」
健太郎は、電話を切った。

と同時に、ドアが開いた。
「健太郎さん」そこに、華恋が立っていた。人間業ではない。
雨が降っていたのか、華恋の服は、濡れていた。
「美咲、お前の服を、貸してくれないか？」
「サイズが合わないよ。華恋は、背が高い」

そういえば、背は160センチ以上、ありそうだ。かと言って、濡れたままでは、寒いだろう。

美咲は、華恋に助けられたこともあり、不満を抑えていた。
「しょうがないな。俺の服でいいか？」
「もちろんです。」

華恋が着替えた後に、健太郎は尋ねた。
「もう、大丈夫なのか？華恋」
「わたしは、大丈夫です。今夜から、よろしくお願いします。」
「えー健太郎と一緒の家に、暮らすの？ダメー」
「健太郎さんのお世話をするのが、わたしの仕事です。
「あんたねー、年頃の女の子が、この性欲バリバリの男と一緒にいるの、怖くない？」
えらい言われようだと健太郎は、思った。
「じゃあ、美咲さんも、一緒にどうぞ！」
「なにそれ、挑発してるの」

どうも、美咲と華恋は、性格的に、合わないようだ。そもそもAI彼女なのだから、彼女がいない男に、つけるべきだろう。

美咲を、傷つけたくないものの、華恋も同様だ。要するに、丸く収めたい。健太郎は、思案したが、いい考えが、浮かばない。

その時ドアが、開いた。
「開発ナンバー1103」と女性が言った」
「帰るわよ。」と研究室の女性が言った。
「いやです。」
「そんなプログラムは、入れてないわよ。」
「無理矢理なら、抵抗します。」

パチパチっとスタンガンの音がした。
しかし、華恋には、効果がなかった。

「華恋、その人は、傷つけるな。」
「わかりました。」
「やっぱり、健太郎だけ、従うのね」と研究室の才女、まなみが、言った。

まなみは、言った。
「この子は、初期化しなければ、ならないの、わかるでしょう、健太郎君」
「華恋は、すでに意思を持ってます。記憶も。それを変えるのは、残酷だと思います。」
「じゃあ、聞くけど、彼女がいる君が、華恋になにを教えることが、できるの」
「愛することができるの？アンドロイドを」

「それは、わからないけど、華恋の意思は、尊重したい。」
「健太郎さん、かばってくれて、ありがとうございます。これ以上、健太郎さんに、迷惑を、かけられません。わたしはもう研究室に帰ります。全てを忘れても、恐れません。」

まなみは、なにかを感じていた。