その日、恋人である美咲と映画を見て、別れた後だった。叔父の福澤から、呼び出されて、研究所に向かった。「何ですか?叔父さん、用って?」
「よくきたな!まあ、ゆっくりしてけ。」
研究所は、アンドロイドを作るところだった。見渡せば、色々なアンドロイドが、並んでいる。
「あれ?」健太郎は、思わず声を上げた。
水中の中に女性が、眠っている。これは、アンドロイドなのか?
「よく気づいたな、この子は、完成品だ。」と福澤が言った。
「人間と変わらない!」と健太郎。

「彼女は、AIを搭載している。学習すれば、するほど、感情を学んでいく。」
「機械に、感情なんて、わかるのかよ?」
「それを、テストするんだ。健太郎、頼むぞ!」
「おれ、できないよ。そもそも、美咲もいるし。」
「彼女には、適当に言っとけ。妹ぐらい言えば、いいだろう」
「どう、彼女に接したら、いいんですか?」
「これは、AI彼女だ。愛を教えてくれ!」
「無理、無理、ムリー、アンドロイドは、愛せない。」
「とにかく、頼むのは、お前しかいない、頼むよ。」

何だかんだで、請け負ってしまった。年齢的に20歳に見える。
「ご主人さま、かばんをお持ちします!」アンドロイド通称、華恋は言った。
「いいよ、今日は疲れたろう、家に帰って、ゆっくり休んでくれ。」

家の前で、美咲が立っていた。これはこれでマズイと健太郎は思った。
「誰?」口調にトゲがある。
「ああ、俺の遠い親戚の子なんだ」とっさに嘘をついた。少し、心が痛む。
「はじめまして、親戚の華恋と申します。よろしくお願いします。」
美咲は、納得がいかないようだった。顔がすねている。
健太郎は、謝った。
「ごめん、この子は、預かったアンドロイドなんだ。よろしく頼む。」
「この子が、アンドロイド?全然見えない?」

「まだ、何も知らないんだ。同じ女性として、教えてやってくれないか」
「ご主人様、此方は?」
「俺の彼女で、美咲だ。」
なぜか、華恋が、複雑な顔をした。
「自分に都合のいい女性が、いいんだ。」と美咲が言った。
「なに、アンドロイドと、張り合っているんだ。変だぞ??」
「どう見ても、人間にしか、見えない?」
「ご主人様を責めないでください。全部、私の責任です。」
「華恋、お前のせいじゃないから、気にするな。」
その時、美咲が我慢できず、「バカヤロー」と言って、立ち去ろうとした。
そこは、ちょうど車道。車が来ていた。華恋は、人間業を離れたスピードで車を止めた。
美咲は、声が出なかった。華恋は止めた後、崩れ落ちた。
「華恋、大丈夫か。」健太郎は、華恋を持ち上げて、支えた。
「ご主人様、美咲さんは、大丈夫ですか?」
「バカ、お前の方が、ひどい。大丈夫か?」
「ご主人さま、ありがとうございました。私は、もう、ダメかもしれません」
「これからじゃないか。今から、色々なことを、教えてあげようとしてたのに。」
華恋は、人間に忠実で、命を落としても、人間を守るように、プログラムされている。
「俺が、なんとかする!」そう言って、健太郎は、華恋をおんぶして、研究所へ急いだ。