「ゆうちゃん!今日パンケーキ食べに行こー!」
「昨日クレープ食べたばっかじゃん〜」
周りから見ると、お似合いなカップル。
喧嘩も少なく、仲良しな二人。
長身で細身、目が切れ長で顎のラインが綺麗。
オシャレでクールな、カッコイイ彼氏。
ぱっちりとした目にナチュラルメイク。
色白で明るい、可愛らしい彼女。
誰からも好かれる二人。
学校内では有名なお似合いカップル。
全ては表の評価で決まる。
裏なんて知っているのは自分だけ。
誰でも裏はあるものでしょう?
裏がない人間なんて、いるのかな。
所詮みんな、1番好きなのは自分。
自分さえ良ければそれでいい。
そうじゃない?
もし違うよって言う人がいるとすれば、そういうのはなんて言うのか、教えてあげる。
「 偽善者 」
「おつかれさまでーす!」
バイト先は、家から徒歩15分のレストラン。
北海道の2月は、今日の気温-7度。
白い息と共に、手がかじかむ。
私、大野真理亜。高校2年生。
もうすぐで3年生になる目前。
「ゆうちゃん〜今終わったよ!」
バイト終わり、外へ出たら電話をかける。
帰り道では彼氏に電話がお決まり。
歩いている時間が短く感じる。
『バイトお疲れ様〜。さっきまで寝てた』
私の彼氏の、堂島優。
通称、ゆうちゃん。
私たちは高校1年生の冬からつきあっていて、今で1年くらいかな。
高校も同じ。クラスも同じ。
学校内のカップルの中だと、付き合っているのが一番長い。
「や〜!テスト勉強するんじゃなかったの〜!?」
『しようと思ってたんだけどね。明日でいいや。一緒にやる?』
「やるやる!!!」
ゆうちゃんと私は、学年で成績トップを争う良きライバル。
私たちの学年は、成績トップの限られた人がA組、他はB〜Dとランダムでクラス分けされている。
つまり、成績優秀者はA組、トップ以外はランダムということ。
ゆうちゃんと私は毎年A組をキープしていた。
高校一年生の春。
私はゆうちゃんに一目惚れされたんだ。
A組で同じクラスだった私たち。
初めての席替えで隣の席になった。
隣の席の人って、なんか仲良くなるよね。
教科書忘れたときとか、英語の授業でペアになったり。
何かと接点があったせいか、いつのまにか私とゆうちゃんは
付き合う前から一緒に帰ったり、遊んだりその仲になっていた。
もちろん周りからは付き合ってるの?と誤解されてたし、
付き合ってないよ、と伝えれば
早く付き合いなよー!絶対ゆう、まりあのこと好きだって!とか言われてたりした。
でも私はそのころ、正直ゆうちゃんに恋愛での好意はなかった。
恋愛なんて、いつまでも続くものじゃない。
それに、高校生から付き合って結婚!なんて、ごくわずかの人しかありえないドラマの中の話でしょ。
でも5月くらいには即告白され、私はまんまと振ったんだ。
それから何回か告白されて、ようやく付き合ったのが高一の12月。
『あのさ、こんなこと言ったら怒ると思うけど・・・俺、まだまりあのこと好きなんだよね・・』
『何言ってるの。怒らないよ?』
『今でもまだ、付き合ってほしいって・・・思ってる』
『うん。いいよ』
『え?!今いいよっていった?!言ったよね!!!』
・・・ってな感じで、付き合ったのを覚えてる。
正直、ゆうちゃんはイケメンだし、女子からも男子からも人気の高い人。
一緒にいたら自慢できるような人だし、いいなぁ~って思われたいがため為に付き合った。
別に好きになったからとかじゃなくて、嫌いじゃないから付き合った。
一緒に並んでても格好がつくような男だったから。
私は本気で恋愛する気なんてさらさらないし、恋愛なんて学生時代の遊びでしかないと思っていた。
そして、今になってもう1年の月日が流れていたなんて。
私は今でも、遊びの恋愛だと思っている。
お互い自由にのびのびといたらいい。
束縛なんてもってのほか。
他に目移りしたなら終わればいい。
恋愛なんて、そんな簡単なものだと思っている。
ゆうちゃんは、一緒にいて楽だし、楽しいし、そこらへんの男子の何倍もかっこいい。
下手すれば芸能人顔負けのレベルでかっこいいんじゃないかな。
そんな人が私を好きになってくれて、付き合って、ゆうちゃんにはとても感謝している。
でも、ゆうちゃんがたまに、将来について話し出したりする。
私は、ゆうちゃんと結婚はしないと思うし、結婚願望もまったくといっていいほどない。
結婚すれば、幸せなこともあれば、そりゃあ苦しいこともある。
私は少しも苦しいことを体験したくない。
自由に生きていたい。
好きなことだけをして、自由に気楽に生きる。
自分のために稼いで、自分のために使う。
そんなクソみたいな考えを持っているのが私だ。
二人で困難を乗り越えよう・・・なんて、そんな綺麗事いってられるか。
翌日の朝。
今日も氷点下の北海道。
80デニールのタイツに、もふもふのスヌード。
手袋着用で、携帯は手袋モード。
いつも通りの7時50分のバスで、学校へ向かう。
「まりあーーーー!おはよ!!」
「おー、おはよ~」
いつもバスで一緒になるこの子は、及川里奈。
2年になって、A組にあがってきた努力家で、今ではクラスで一番仲が良い。
「あ、そだ!まりあ見て!!」
そう言われて見せられたのは、フェイスブック。
画面には見たことない男の人のページ。
「昨日この人からメッセージきてさー、めっちゃかっこよくない!?」
「うわ、まじだ。激イケメン!!!」
「でしょ!?ライン交換して、昨日からやりとりしてるんだけどさー、今度ご飯行くことになった!!!」
いいな~!なんて言いながら、もう一度りなの携帯画面をのぞく。
そして、アカウント名で私も検索をした。
アカウント名は、「椎さん」。
名字からなのか、名前からなのかは知らないけど、検索したらすぐ出てきた。