「いやいや、酔い潰れないから安心しな。
ってか潰れた事ないっしょ?
そんなに弱くないわ」
『余裕、余裕』って
片手をヒラヒラ振りながらビールを喉に流し込んでいると。
「そういう話じゃない」
と、否定され
「いいからやめろ」
ジョッキを取り上げられてしまった。
「え、ちょッ」
アタシの酒を返せッ
「七星、少しは体の事を考えろよな。
心臓ストップする前にやめとけ。
それでなくても負担の掛かる飲み方ばっかしてんだ。
また病院戻りになっても知らねぇぞ」
「き、気を付けまーす…」
急に説教されたな…。
立場がなくなり
小さく謝るしかないこの状況…。
「もうあの事故から5年くらい経ってるし
そんなに心配しなくても…」
「あ?」
うわーぉ。
睨まれたー…。
「まさかお前…
死にかけた事を忘れたんじゃないよな…?」
死にかけたって
そんなオーバーな…。
――5年前
入社してしばらく経った頃
電車に乗るため駅に向かう途中
信号無視された車に跳ね飛ばされて
体を道路に叩きつけられたって経験があっただけ。