早乙女さんの本音が聞けて
どういう形であれ
アタシに話してくれた事が少し嬉しかったな…なんて
呑気な事を考えていても
現状は何も変わらず
むしろ、悪化の一途を辿っていた―――



「皆ももう知っているとは思うが
 副編集長のご両親が
 不慮の事故に巻き込まれてしまった。
 当面の間、仕事復帰が難しいだろう。
 編集部の方も大変だろうから
 時間や日程の調整は配慮するように」


各部署の上層部から
社員達に改めて報告があった。

そして今朝ウチの部署も
詳細は伏せられたが広報課長から報告を受け
社員全員、沈んだ表情で仕事をしている。

それもそのはず。
理由を知らない人達だって
”両親の不慮の事故で、しばらく仕事復帰が難しい” だなんて聞かされたら
何があったかくらい予想がつく。
そして同時に
『自分が逆の立場だったら…』と煌月の心情を察し
彼が今どんな状況なのかと心を痛める。


アタシも同じだ。


それだけに誰も何も言えず
どんよりな空気だけが社内に漂っているのだ。