「セツナに当たらないでくれるかなぁ」


背中越しからフォローの言葉を掛けてくれたのは
陽向さん。

立ちすくむアタシを安心させる為なのか
肩を軽くポンポンと叩きながら
聞こえるか聞こえないかの小さな声で
『大丈夫だから、落ち着け』と言ってくれた。

煌月の言葉に心臓が締め付けられたのを
わかったのかもしれない。


「アイツがあんな態度を取ったのには俺も驚いたけど
 2人ともセツナに八つ当たりはヒドすぎでしょ」

「陽向さん…」


この人って
こんなに優しかったっけ…

それとも
アタシの精神的ダメージが大きすぎて
そういう錯覚を起こしているのか…


「なんなのよ…
 ジンくんの事
 何も知らないくせに。」


早乙女さんはキリっと鋭い目つきで睨みつけ
苛立ちを吐き出すと
追い掛けるように出て行ってしまった。


まだ状況が把握出来ていないけれど
険しい表情を浮かべる陽向さんを見て思った。

たぶん煌月に何かがあったんだという事実を知らないのは
アタシだけなんだと―――