俺は兄貴を好きではないけど、
嫌い、ではない。
その理由は、兄貴が
元々、優秀なわけではなくて
努力でいろんなものを得てきたと
知っているから。
でも、親父の言われるがまま
動いている兄貴を
やっぱり好きだとは思えなかったし、
比べられる毎に、
お前が優秀すぎるからだと
理不尽な憎しみの感情を
抱き続けてしまったから
今更どんな顔していいか分からず
避けて来ていた。
そんな気まずい俺たちの沈黙を裂いたのは
兄貴だった。
「さっきの父さんとのやり取り、
ずっと聞いてたんだ。」
…そんな事だろうと
なんとなくは分かっていた。
でも、なんでそれを…
「修也がずっと
この家を、自分の置かれる環境を
嫌っていた事は分かってた。」