本を読む手を止め、
私に笑顔で手を振ってくれた彼に
近付いた。


「今日も私のが早かった?」


「うん、修也はまだ来てないよ。
アイツ、学校から出るまでに
時間かかるからね。」


苦笑いしながらそう言う山内君に
首を傾げた。


「時間かかるって…なんで?」


「修也は、放課後なのに
先生に頼まれごとされたり、
女子生徒から囲まれて
遊びの誘いを受けたりするから
それをこなしたり、断るのが大変なんだ。」


と、説明してくれた。


「そうなんだ…。」


私は彼にそうとしか返せなかった。


余計な事を言ってしまわないように
抑えたって方が正しいけど。



修也が、どんな闇を抱えているのか
それは私にはまだ分からない。


そんな状態で、
彼をよく知りもしないで
あーだこーだと
人と修也の話をするべきではないと思ったから。


それがいくら、
修也を大切に想っている
山内君だったとしても。