そう梨央の顔を思い出しながら言うと
はっと、小さく、見下すように彼は笑った。
「バカじゃねーの?
結局人は裏切るんだよ。
そんな場所、この世には存在しない。
それに、俺を理解してくれるやつなんて
いるわけないんだから。」
全部を否定する言葉に
私の中の何かが切れてしまった。
「…バカはどっちよ。」
「は?」
「バカなのは私じゃなくてキミのほう。
何でそう、全部決めつけるかなぁ。
そりゃあ、私の親友だって
私の事全部は知らないし、
私だって彼女の全部は知らないし、
なにを考えてるかなんてわからない。
でも、それって当たり前でしょ?
私とは違う、別の人間なんだから。
でも、分かりあうために
お互いが歩み寄るんだよ。
相手を理解する為に言葉があるんだよ。
思ってる事は口に出さないと
何にも伝わらないの。
ってか怖いんでしょ!
本当の自分を誰かに見せるのが。
この弱虫!ヘタレ!バカ!アホ!
頑固おやじ!分からず屋!」