俺は大きな拍手に囲まれながら
会場を後にした。




あれから10年。

俺は白花病の研究をするために
薬品会社の研究員として働いている。


そしてその傍ら、
一架との出逢いを物語にして
小説として出版した。



梨央ちゃんと翔は結婚して
2児の父と母となっている。


一架が亡くなって葬儀が行われた日、
梨央ちゃんにも
一架からの手紙が渡され、
梨央ちゃんは真実を知った。

手紙を読んだ彼女は
「ホント…バカ…。」
そう言って泣きながら笑っていた。






なぁ、一架見てるか?

俺は研究員になって小説を書いた事。
梨央ちゃんと翔が幸せに暮らしてる事。



俺が勝手に小説にしたこと怒ってるか?

それとも、上手く書けてるって
褒めてくれるか?


…どっちにしろ
最後はあの真っ直ぐな瞳で
笑ってくれるんだろうな。



大きく息を吸って空を見上げると
頭の中に一架の笑顔が浮かんできた。