その笑顔は、
大半の人が見れば
本当に笑っているように見えるんだろうけど
私にはそうは見えなかった。


自分を、頑張って取り繕うとしている
違和感を感じたんだ。


そんな彼がもっともっと気になって
私はフェンスを越え、
彼の隣へと並んだ。



「へぇ~!
フェンスがないだけで
全然違って見えるんだね!
私、よくここから夜景眺めるんだけど
こっちのが素敵だね!」


そう言って笑みを向けると
彼は困ったように笑って私に尋ねた。


「もう遅いし、帰らなくていいの?」


私の心配をしているように聞こえるけど、
遠まわしに帰れと言われているような気になって
私は「いつも遅いから大丈夫。」と返した。