去年、私達はから揚げを出そうと
申請書を出したんだけど、
2・3年の先輩達も何組か被っていて
結局じゃんけんで決めたんだ。
去年の文化祭実行委員は
五十嵐君で、
一回戦でじゃんけん大会敗退をして彼は
周りに黒い空気が見えるほど
落ち込んで帰って来たのをよく覚えてる。
クラスメイトに慰められてる時、
子犬のように涙目になっている彼は
可愛そうだけど、なんだかクスッと
笑ってしまうほど可愛くもあった。
「…ふふっ。」
それを思い出していたら
声に出てしまったみたいで
梨央に変な目で見られた。
「一架、なに一人で笑ってるの。」
「いや、さ、去年のから揚げ争奪じゃんけん。
帰って来た時の五十嵐君が
子犬みたいで可愛かったなって
思い出したらつい。」