『聞いただろ?米村さんって女子のこと、翠知り合いか?』

『ああ、うん、知らない子。なんか事故だったって……可愛そうだよね』

ワントーン落ちる翠の声。俺と同じようにショックを受けているのだろう。

『なんかさ、それ聞いたら翠の声聞きたくなって』

そうだ、自分の気持ちに、正直に。

『え?なんでよ?』

スマホ越しに聞こえる嬉しそうな声にホッとする。もう怒ってないのかもしれない。

いや、怒ってるのは俺の方なんだけどな。

『もし、亡くなったのが翠だったら……とか考えちゃって』

情けない、なんて思われないだろうか。男だって不安になったり、誰かに頼りたいと思う時だってあるんだ。

『えー?なにそれ?』

翠の言葉はかすかに笑っているようだった。嬉しいのか?もしかして、少しバカにされているのか?

『翠だって、もし急に俺が死んだら嫌じゃないか?』

翠にとって、俺の存在はどれくらいの大きさなんだろう。

『そりゃ、いやだけど……』

いきなりこんな重い話し、しない方がよかったのか?翠の声がまた低くなってしまった。

『それよりさ、今度の金曜休みなんだ。どっか行こう』

『え?ほんと?金曜ならちょうど夏祭りだよ!一緒に行こうよ』

明るい声に翠の笑顔が眼に浮かぶ。