家に帰っても、胸の奥はザワザワと落ち着かなかった。こんな日はもう、自分の気持ちに身を任せるしかない。

ベッドに寝転んでみたものの眠れるわけもなく、仕方なくカバンからタブレットを取り出し、翠の投稿がないかをチェックする。

『バイト帰りに友達と』そんな呟きと共に、友達と2人変顔をしている写真がアップされている。

いつもと変わらない様子に安心するべきなのか、イラっとするべきなのかすら分からなかった。

とりあえずイイねボタンだけは押しておく。

後で何を言われるか分からないから。無視できないのが、やっぱり俺の弱い部分なのか?
そろそろ翠に連絡を取るべきなのかもしれない。こないだはごめん、そんな一言できっと全てがうまくいくことは分かっている。

でも、どうしても男子と仲良くしているあの場面が頭に浮かんできて、俺の思考を妨げる。

夏休みだから学校で会うこともできない。そんな出口のない迷路の中をさまよい、また入り口に戻る。そんな繰り返しだった。

そして校内SNSのアプリを開きあまり考えることなく指を動かす。

『俺らしいって、なんだ?』

自分の気持ちを全てさらけ出していたら、周りに誰もいなくなるだろう。だからみんな空気を読んで自分を制御している。

でも今日のように、気持ちを閉じ込めておくことが難しい時だってある。たまには、いいんじゃないのか?もしかしたらそれによって、少しずつでも周りが変わっていくかもしれない。

常に、自分らしくありたい。そう思うけど。その自分らしささえ、何なのかが分からなくなる。

虹が描いていた透き通るような青い空。虹はあんな風に濁りのない気持ちを持っているからあんな絵が描けるのだろうか。それとも、俺と同じようにそれを望んでいるのだろうか。

『青い空がきれいだった』

虹の描いた空も、見上げた高い空も。俺の手には届きそうにもなかった。