もちろん宿題なんて開く気にはならず、扇風機の風を顔に当てて頭を空っぽにする。

みんなはどうやって、こんな忙しい心をコントロールしているのだろう。

たくさんの友達、写真映えを気にして、イイねを押しまくる。

そんな合間にしっかりと恋までして。宿題なんてやる暇があるの?私が心配することじゃないけど。

刺激は求めていないはずなのに、小椋くんとのドキドキは求めている自分がいる。

「ゔー」

扇風機の風に乗って自分の声が部屋に広がる。

やっぱり、難しい。

カバンからタブレットを取り出す。充電に繋ぎながら電源を入れる。

やはり、イチのことも気にかかっていた。個人的にやり取りした以上、もう後戻りはできなかった。

あれから頻繁にではないが、何度かイチと私は個人的にメッセージを送りあっていた。

今日はイチからのメッセージも、イチの新しい呟きもなかった。

『真剣な姿は、やっぱりかっこいい』

こんなことを書いたら、私が誰かに恋してるって思われてしまうかな……。それでも他に気持ちがまとまらず、そのまま投稿をした。

夕焼けから夜空へと変わる瞬間。一瞬だけ空が赤紫色に染まる瞬間。

カーテンを開けるとそこには小さな弓張月。
瞬きをするたびに色を変える空は、まるで月の気持ちを表しているようで。

次は、月の絵を描くのもいいかもな……。

シャッと音を立ててカーテンを閉める。