「分かったから、もう帰ろう!」

「はいはい」

朱里と一緒に靴箱から外に出ると、夕方とは思えない熱気が頬にまとわりつく。

「あづー」

「もう5時過ぎてるのに」

最近の猛暑にはもうぐったりだ。

グラウンドの横を通っていると、練習を終えたサッカー部がランニングしているのが見えた。

「こんな暑いのに、よく走れるね」

「ほんと」

彼らは暑さに慣れているんだろうけど、それにしても練習した後に走るなんて、私にはとても無理だろう。

そこには小椋くんの姿もあった。こちらには気づいてないようでホッとする。

部員たちはさすがに疲れているのか、ダルそうな表情を見せながらダラダラと走っているように見える。時折近くの人と話しをしながら笑っていたりしている。

思わず足を止めて小椋くんの様子を見る。

彼は他の部員とは違い、真剣な表情でランニングをしている。ダラダラと足を前に運んでいるだけの他の部員とは違うように見えた。

手にも足にもしっかりと神経を働かせて前を向いて。話していたりもしない。


ああ、なんか、いいな。


もちろん彼だってこの暑さの中の練習は疲れているだろう。それでも気持ちを緩めず走る姿は、たくましく。思わず見とれてしまう。

「こら、見すぎ!」

「あはは」

やばい、やっぱりかっこいい。

容姿じゃなくて真剣にサッカーと向き合っているのがよく分かる一生懸命な姿は、私の心に熱く染み渡っていく。