「あ、そうだ。明日から先生出張で。7月いっぱいは戻ってこられないから、部活もなしね。描きたい人は絵持って帰っていいわよ」

たまにしか顔を出さない顧問。

だから独身はイヤなのよね、長い出張に行かされる。みたいなことをぶつぶつ言っている。

先生がいなくても絵くらい描けます、と言いそうになったが、そうもいかないんだろう。そして誰からも文句も出ない。そんなユルさがたまにイヤになるけど。

仕方ない、絵を持って帰るか。

隣を見ると、すでに朱里は描きかけの絵を大きな袋に入れようとしていた。私は黙ってそれを手伝う。

「ありがと」

いつもの朱里の笑顔。それから私の絵をしまうのも2人で。

ほかに絵を持ち帰る人はほとんどいないようだった。

外は日が暮れてきたけれど、この暑い中大きなキャンバスを持って帰るのも大変だ。

夕陽が眩しいグラウンドを見ると、サッカー部はまだ練習をしているようだ。思わずあの赤いTシャツを探す。

あ、いた。

目立つその赤い色と、背の高さ。

ちょうど小椋くんがゴールに立ち、他の部員が蹴るシュートを受けているところだ。

真剣な表情はこちらまで伝わる。

蹴られたボールはゴールの右端に飛んで行く。それに合わせ小椋くんも同じ方向へとジャンプし、見事ボールをキャッチ。

「すごっ!」

その素早い反応に私は思わず声を出す。

その私の声に反応したのは朱里だった。

「ほほーん」

何がほほーんだ。

「何よ?」

別にここから見るくらいいいじゃないか。

「気になるんだ」

ニヤリとした微笑みを私に向ける。

「別に……たまたま見えただけだよ」

「あはは、なんか可愛いな、虹」

頭をグシャっとされる。私が男子を気にするのがそんなに珍しいか?