「いや、でもさ。あんなイケメンだし。物怖じしない感じだし……目についた女子には片っ端から声かけてるんじゃない?」

半分は、自分に言い聞かせていた。きっと絵を褒めてくれたのだって社交辞令だし。

「……ほんとにそう思ってる?」

「え?」

朱里の視線がまた一段階鋭くなる。

「ほんとうに、片っ端から女子に声かけてるチャラい奴だと思ってる?」

「えっ?いや……」

朱里の言う通りだ。まだ知り合ったばかりだけれど、そんな軽さは彼からは感じられない。朱里もきっとそう思ったのだろう。

「だよね、そんな感じには見えなかったよね」

「……うん」

ダメだ。やっぱりかなわない。

「虹のいいところは、人に流されないところ。そして悪いところは、自分に自信を持たないところ!」

「あ、はい」

その通りです。分かってるつもりです。

「彼と、もっと話したいって思ってない?」

「えっと、思うけど……緊張しちゃうから……」

「じゃ、彼がサッカーしてるの見たいって思った?」

「あ、それは思った」

朱里が、口の端しを少し上げて微笑む。そして私の手を引いて椅子から立たせ、窓際へと引っ張って行く。

そこから見えるグラウンド。思わずゴール付近の赤い練習着姿を探してる。

「あ、いた」

そこには、さっき私に見せてくれた笑顔で、仲間と話しながらボールを蹴る小椋くんの姿。