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テストから開放された日曜日。

梅雨の晴れ間が見える暑い日になった。グラウンドでは久しぶりに思い切り体を動かしている運動部員たち。

私は朱里に誘われ誰もいない美術室で2人で絵を描いていた。日曜に部活に来るなんて、きっと私と朱里くらいだ。なんて真面目な部員なんだろう。

夏休みに入るまでに、コンクールに出す作品の仕上げに入りたいと言っていた朱里。

半分に切られた顔が2つ並んでいるその絵はまだ、のっぺら坊で。

なのに、左の人の背景にはボカした色とりどりの色。右の人の背景には覚めるような青が途中まで塗られている。

「なんでのっぺら坊?ちょっと怖いんだけど」

「ふふん、顔は命だからね。最後に集中して描くよ」

「え、まさか自画像じゃないよね」

「さあね。それは出来てからのお楽しみ」

え……ほんとに自画像?自分に自信がある人は自画像とか描いちゃうのかな。

「てかさ、虹は海に行きたいの?」

「へ?」

唐突な質問に変な声が出てしまった。なんで海に?私が?

「だって、海、でしょ?」

私の前のイーゼルに立てられたキャンバスには真ん中に船が描かれ、背景の1番左にはまさに今塗りたての青。グラデーションをかけるために取った筆には水色。

そうか、そりゃ海に見えるよね。

「いや、うん。これ空のつもり」

「へ?空?」

今度は朱里が変な声を出す。

「あはは、そうだよね。船だもんね、海に見えるよね」

「うん」