「あー美味しいね」

「だね」

こんな琥太郎に、たまについていけないと思う時もあるけど。呆れてしまう時もあるけど。

その何にでも懸命な前向きな姿勢は私には持ち得ない気持ちで、羨ましくもある。

一度、朱里に聞いたことがある。

琥太郎と付き合いたいって思ったことはないの?と。

朱里は、ないと即答したけど。少し考えてこう答えてくれた。

「他に好きな人はできるかもしれない。でも琥太郎のことを理解してくれる人とじゃないと、私は付き合えないかな」

「それって、その人より琥太郎が大事ってことじゃないの?」

「……かもね」

こんな風に想ってもらえる琥太郎が羨ましい。心底そう思った。

もうこの2人は付き合うとか付き合わないとかじゃないんだな。

きっと、ずっと一緒にいるんだろうな。そう感じた瞬間だった。

私も、そんな誰かのかけがえのない存在にいつかなれるのだろうか。私の隣でいつも笑っている人がいるなんて、今の私には想像すら出来ない。

2人と別れ、家に着くとすぐに。

「えー?今日のメシ、魚かよ?」

という空の悲痛な叫びが聞こえた。彼は肉があれば生きていける生物に成長しているようだ。分かりやすすぎて笑えてくる。

「肉ばっかり食べてると太るよ」

「は?ねーちゃんと違って運動してるから大丈夫だし」

「あーはいはいそうだね。でも勉強もした方がいいと思うよ」

「やってるしぃー」

いつ見ても、何も考えてなさそうな弟とのやり取りが面倒になって来たので、着替えるために自分の部屋へ行く。