最終下校時間になり、仕方なく3人で教室を出る。

雨は止んでいたが、薄暗くても空には雨雲がかかっているのが分かる。これじゃ、空の色も分からない。

「俺、英語できるかも」

ほんの数時間前まで英語を諦めようとしていた琥太郎。なんとか範囲内のワークを終わらせることができたからか、急に自信を持ったようだ。

「単純でいいね……」

「ほんと」

これが結果に繋がればいいんだけどね。

「よし、ワークが終わったお祝いにみんなで乾杯だ!」

地元の駅の階段を登りながら叫ぶ琥太郎は、まるでテストが終わったかのような上がりっぷりで。

「なんか、ダメな気がする」

「同じく」

中学の頃からそうだ。このポジティブな性格に何度も呆れ、何度も助けられた。今回はきっと、呆れる方だ間違いない。

階段を登りきった所にある自動販売機で、琥太郎が早くも3本のペットボトルを持っているのが目に入る。本当に乾杯をするようだ。

「ほら」
「ああ、ありがとう」

冷たく汗をかいたペットボトルを受け取った瞬間。

「かんぱーい」

大きな声で琥太郎がペットボトルを当ててくるから笑ってしまう。

こりゃ、テストが終わったら一体どんなテンションになるのだろう。

それでも冷たいオレンジジュースは、ムシムシとしたまとわりつく暑い空気と、英単語を無理やり詰め込んで熱くなっている頭をほどよく冷やしてくれる。