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「よく降るなぁ……」

梅雨入りを宣言した空はどんよりと雨を降らせ続けている。ついでにもうすぐテストときたら、より一層憂うつなキブン。

「なあ……もう俺、英語諦めよかな」

「は?何言ってんの?英語が1番大事なんだよ?高1から諦めてどうすんの?」

「だってさぁ、もう英文見てるだけで寒気が……」

「暑いから寒気がするくらいでちょうどいい!ほら、やるよ」

テスト1週間前になり部活もなく、朱里と琥太郎と3人でクーラーの効いた教室で勉強をしている。相変わらずテンポの良い2人の会話をバックミュージックに。

「あ、こら虹!また絵描いてる!」

英単語を覚えていたノートにはいつのまにか船の絵が描かれている。

「あー……」

「あー、じゃない!もう、2人ともやる気あるの?」

「ないよ」
「ないな」

重なった声に呆れる朱里に琥太郎と目を合わせて笑い合う。

こんな瞬間が、私は幸せだ。気を使わない、飾らない友達。私を理解してくれる親友。

1人だと悶々としてしまうテスト勉強も、朱里たちと一緒なら楽しいとすら感じるから不思議。

まあ、勉強がはかどるかどうかはまた別の問題だけど。

「ほら、今日は英語をやるって決めたでしょ?さ、ワークやろ」

「はーい」

渋々ワークを開いて問題を解き始める。英語は他の教科に比べると得意な方だけど、好きなわけではない。まあ、好きな勉強なんてないけど。

「 サトシ カム トゥ マイ……」

「うるさいよ、黙ってやりな」

「あはは、発音悪すぎだよ、琥太郎」

「えー?」

ほら、みんなといると自然と笑顔が溢れてくる。