その潔さは、もはや清々しい。

「朱里、らしいね」

見た目の愛らしさとは違い、中身はなかなかの男前……時々おっさん。

「早く秋来ないかな」

「まだ梅雨にも入ってませんよ」

リアルすぎるそのサンマの姿に、みんな苦笑いするしかない。

朱里は風景画をモチーフにしたようなイラスト調の絵が得意だ。その作品はいつも人の心を引きつける。

ただ、時々。こんな感じで欲望のまま筆を走らせることもある。私はどちらの作品も大好きだけど。

そんな朱里はもう、新しい作品に取り掛かっている。

今回は珍しく人物画っぽい感じだ。半分に切られたような顔が、大き目のキャンバスに描かれている。そういえばコンクールに出したいって言ってたな。

どんな感じに仕上がるのか、楽しみだ。

「虹、次は決めてるの?」

いつものように仕上げた達成感と、ほんの少しの寂しさと。そんなことを感じながら外を眺める。

「ううん、まだ全然」

「だよね。虹が何かテーマ決めて描くなんてないもんね」

はい、その通り。行き当たりばったりです。

「朱里は?珍しいね、人物画」

まだ下書き中のキャンバスを指差しす。

「うん。今回はちょとだけ気合いいれようかなって。テーマは内緒!出来上がったら教える」

「ふーん……そか」

天気の良い夕暮れ。遠くの空がほんのりオレンジ色に染まっている。

この時間からの空の色の変化が好きだ。特に天気の良い日には、青い空から夕焼け空、そして太陽が沈んでくるにつれて紫色へとグラデーションを作る。

次は、そんな変化を作品にできたらいいかな。

運動部の元気のよい掛け声が響いている。