高い位置に投げられたボールは思い通りの弧を描いて飛んでいく。

俺と目を合わせたそいつは、飛ぶボール目掛けて走り出す。

頼む!間に合ってくれ!走れ!

ボールとそいつの動きに気づいた相手チームの1人が、同じくらいの距離からボールの落下地点目指して走ってくるのが見えた。

「行けっ!」

思わず叫ぶ。

しかし、体力的にキツかったのか、今まで全力で走っていたそいつは相手チームが同じ場所に向かい走っているのに気づくと急にペースを落としてしまう。

「おいっ⁉︎」

諦めずに走り込んできた相手チームにボールを取られ、あっという間にパスが繋がり、ダメ押しの1点を取られてしまった。

ピーッ‼︎

試合終了。

「んだよっ!」

なんで諦める?

相手チームが集まり喜ぶ横で俺は、肩を落とすしかなかった。トボトボと周りから同じチームの奴らが歩み寄ってくる。

その中には、俺からのパスを諦めた奴もいた。

「お前、諦めんなよ」

思わずそいつに向かって吐き出してしまう。

あのパスが繋がれば、もしかしたら追いついていたかもしれないんだ。

「いや、あれは無理だろ相手チームのヤツ、めっちゃ速いし」

ヘラヘラ笑いながら言うもんだからますます腹が立つ。

「は?」

揉めたくはない、みんな頑張ってきたから決勝まで残れたのも事実で。

「いや、あれは無理だろ、なぁ?」

別のヤツも笑いながら煽る。

「もし、取れてても、俺あんなとこからシュート入らねーしな」

「あはは、そりゃそーだ」

こいつら、負けたのに何笑ってんだ?