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「宣誓!我々、生徒一同は……」

キーパーやっててよかった。キーパーはゴールを守るだけじゃなく、試合全体を見渡して味方に声を掛けるのも大事な役割りだ。

だから、大きな声を出すのは慣れている。

オレの第一声で騒ついていた生徒たちも一瞬静まり返った。

生徒代表としての宣誓。みんながオレに注目して……るわけないことくらい分かってるけど。

「……1年4組 小椋 一紫」

くるり、と回れ右をして小走りで列へと戻る。

とりあえず、間違えずに滞りなく役目を終えたことにホッとする。

小さな頃、テレビで見た高校野球の選手宣誓。あまりのかっこよさに、サッカーをやめて野球をやろうかとさえ思った。

そんな憧れの選手宣誓が、なんだかほろ苦い思い出となってしまった。

ふぅ、とため息を吐いて真っ青な空を見上げる。

「なに?もしかして緊張してた?」

隣の女子がからかうように笑う。

「いや、そんなんじゃねーよ」

試合の方がよっぽど緊張する。

「ふふ、かっこよくできてたよ」
「おまえ、ちゃんと見てたのかよ?」
「え、あはは」

ほらな、そんなもんなんだよ。

実際スポーツに興味がなければ、球技大会なんてダルい行事なんだ。

肩の力を抜けばいい。それなりに、活躍できればいいんだ。オレのせいで負けるなんて大きなミスさえしなきゃいい。

勝ち負けなんて、大した問題じゃない。