「一紫!」

授業が終わり放課後。

カバンを持ち教室を出たオレは早速彼女である小岳 翠(こたけ すい)に捕まる。

笑顔を見せてオレの腕に、からんでくる。

「あ?今日も部活だって言ったよな?」

部活がない日だけ一緒に帰る約束だ。まあ、どうせ顔見に来ただけとか言うんだろう。

「ね、一紫(かずし)選手宣誓に選ばれたんだって?」

ああ、その話しか。情報はやいよな、女子って。

「ああ。選ばれたって……ジャンケンで負けただけだって」

「えー?でも、すごいじゃん。生徒代表でしょ?」

そう言ってオレを見上げる笑顔は本当に可愛くて。もちろん、オレは満更でもなく。

「まあ、翠に恥かかせないように頑張るよ」

「うん。楽しみにしてる」

こんな可愛い彼女を持って幸せだと思う。

「ねー、部活なんかサボってさぁ、カフェ行こうよ。パンケーキ食べたいな」

ほら、きた。可愛く言えばなんでも許されると思ってるのか。

「今日は部活に行く。身体動かしたいんだよ」

「えー?私といるよりサッカーが大事?」

ああ、女ってめんどくせー。どっちも大事じゃダメなのかよ?

なんで自分だけがオレの1番になりたがる?

愛されてる証拠なんだってことはもちろん分かってるけど、こうもしょっちゅうだと、ちょっとウンザリする。