「おはよう、ございます」

いつものように美術室に入ると、とたんに朱里は今あった小岳さんとのことを、同じ学年の人たちに話し始めた。

「でさ、向こうが見てなくてぶつかってきたのに、どこ見てんの?だって!ギロッと睨まれてさ。ね、虹?」

「ああ、うん。感じ悪かった」

そんなことより、私は早く絵を描きたいんだけど。

「やっぱりねー。ウワサでは聞いてたけど……ほんとに性格悪いんだ」

私には関係ない人だ。何でみんなこんなことに関心を持つんだろう。彼女が可愛いから?

「やっぱり小岳さんの彼氏ってさ、顔だけで選んだのかな」

「そりゃ1番は顔でしょ。でも、あの子、男子の前になると人が変わったようにいい子になるって聞いたことあるよ」

そりゃ、彼の前では自分をよく見せたいと思うんじゃないの?そんなもんじゃないの?

「あ……」

「どうした、虹?」

思い出した……球技大会の時。

「選手宣誓した子、その子の彼氏って言ってた」

「ああ、サッカー部の子でしょ。一緒にいるの見たことある。流石のイケメンだったよ」

「美男美女かぁ。まあ、うちらには関係ないハナシだよね」

そうだよ、関係ないって。お互いに好き合ってるんなら、それでいいじゃんか。

「あはは、だねー」

それからもしばらくその2人の話題が続き、会話の終わりが見えない私は1人作業に取り掛かり始めた。