そのキャンバスに描かれていたのは。

私、と鼓太郎だった。

虹色の背景に浮かぶ笑顔の私。

空色の背景に浮かぶ笑顔の鼓太郎。

「すげぇ……」

嘉山くんが呟いている。


朱里ーー!


気づけば頬には涙が流れていた。

「……朱里!」

鼓太郎の声も震えている。

「……っく、うぅ……っく」

ダムが崩壊したように溢れてくる涙を、もうどうすることもできなかった。

朱里の絵を、朱里の気持ちを、もっと見たいのに。涙で視界が揺らいでしまう。

「すごいな……力作だな」

「……っく」

小椋くんの言葉にうなづくことしかできない。

そんな私の背中を小椋くんは優しく撫でてくれる。

暖かく大きな手。

「あらあら、2人とも、大丈夫?」

飲み物を運んできてくれた朱里のお母さん。私にティッシュを渡してくれながらその絵を見る。

「まあ……!なんて素敵……だから2人に先に見せたかったのね……」

言葉を詰まらせるお母さんに、また涙が溢れる。

「羨ましいよ、こんなに思ってくれる友達がいて」

「そうだな」

嘉山くんと小椋くん。

「……うんっ、朱里に、会いったいよっ……っく」

「うん、だな」

背中に置かれている小椋くんの手に力が入るのを感じる。

「なんでっ、なんでっ、朱里がっ……っく」

なんで私を置いて、朱里が?

「大丈夫、みんながいる」

優しい声が私を包み込んでいるよう。


「……っく、うぅっく」

止まらない涙なんて、いつぶりだろう。

大好きな小椋くんの隣で恥ずかしい気持ちと、そんな私を受け入れ包み込んでくれる暖かい手に甘えてしまいたい気持ちと。