珍しく人物画を描いていた。

自画像?とからかうと何故かドヤ顔を見せた朱里。

朱里が亡くなる直前の笑顔がフラッシュバックのように次々と頭に映し出される。

胸が、痛い。

頭の奥がクッと熱くなる。

蘇る楽しく眩しい記憶。

しばらく固まっていたのだろう。小椋くんの大丈夫か?という声に我に帰る。

無言で頷き視線をキャンバスに戻す。

「見られるか?虹」

同じくキャンバスを見つめている鼓太郎が言う。

「……見たい。鼓太郎は?」

「俺も、見たい」

この絵のことを、決して忘れていたわけじゃない。

「じゃ、私は飲み物でも用意してくるわね、ゆっくり見てやって」

「はい」

ただ、亡くなったばかりの頃にはとても見られる精神状態ではなかったのだと思う。

そんな感じでこの絵の存在を、心の奥底にしまっていたのだろう。

でもきっと、今なら大丈夫。こんなに素直に見たいと思える。

何の感情なのかは分からないが、心がブルブル震えているけど。

「じゃ、開けるぞ」

「うん」

隣りには、1番そばにいてほしい小椋くんがいる。

結ばれていた紐が解かれ、包まれていた布が取られた瞬間、華やかな色が視界に飛び込んでくる。


「……っ」


そこに描かれていたものが頭の中に入ってきた瞬間、全身のスイッチが切れたように感じた。

膝から崩れ落ちる私を、小椋くんが慌てて支えてくれたのが分かる。

「おい、大丈夫か」

そんな言葉も耳には入ってこない。

自分でも分かるほど全身が震えている。