「虹がナナかもしれないって思い始めてからは、なんかちょっと複雑でさ。個人宛にメッセージ送れなかった」

再びリフティングを始める。目線はボールから外さない。

「あー……そうだよね」

だから最近個人宛のメッセージがなかったのか。

よく考えたら色々納得がいく。

小椋くんが、イチ。

こうして話す彼と、素直な気持ちを呟いていたイチ。

小椋くんの別の面を知れたようで嬉しい。

「一紫、虹!一緒にやろうぜ」

水分を取りに来た鼓太郎と嘉山くんが口々に私を誘う。

「いや、私はいいや」

見てるだけで充分。

「ほら、行こうぜ」

3人に半ば強引に引っ張られ、しぶしぶ立ち上がる。

「サッカーとキャッチボールどっちがいい?」

「サッカー」

サッカーなら空の練習相手をさせられて少しは慣れている。

「お、いいね」

満足そうな小椋くんがさっそく少し離れたところからパスをしてくる。

ポンと受け取ったボール。足裏に伝わる感触。

何も考えずに隣にいる嘉山くんにパスをする。

「なかなかやるじゃんか、虹」

いや、パスくらい誰でもできるでしょ。

それでも自然と笑顔になるのが分かる。

「鼓太郎!どこ蹴ってんだよ、下手くそか」

「走れ走れ!」

茂みに入って行くボールを追いかけながら小椋くんが言う。

もうすっかり仲良しだな、この2人。

みんなの笑顔。

私がこの中にいるのは何だか不思議な気分。

小椋くんの2つの衝撃発言に、心はついて行ってないはずなのに、落ち着いているように感じられるのは何故だろう。